売上の8割が、昔からの取引先3社。
新規の問い合わせは、年に数件あるかどうか。
営業担当はおらず、社長が付き合いで回っているだけ。
地方の中小企業では、この状態がごく普通に見られます。
問題は、取引先の1社が事業を縮小した瞬間に、会社が一気に傾くことです。
この記事では、営業経験のない社長でも進められる、生成AIを使った新規開拓の始め方を紹介します。
登場する会社は架空です。地方企業にありがちな売上構造を、例として組み立てています。
新規開拓ができない理由は「面倒だから」ではない
社長に理由を聞くと、たいてい「時間がない」と返ってきます。
ただ、もう少し掘り下げると、別の理由が出てきます。
「誰に売ればいいのか分からない」。
「自社の何を売りにすればいいのか分からない」。
「何と言って連絡すればいいのか分からない」。
つまり、動く前の準備が整っていないのです。
そして、この3つの「分からない」は、いずれも生成AIが得意とする整理の作業です。
中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月公表)によれば、営業・販売・サービス部門でのAI導入率は60.3%で、総務・管理部門(68.3%)に次ぐ高さでした。
営業は、AIとの相性が悪い領域ではありません。
むしろ、すでに多くの会社が使い始めている領域です。
まず、自社の強みを言葉にする
営業の第一歩は、売り文句を決めることです。
ここで多くの社長がつまずきます。
長年やってきたことは、本人にとって当たり前だからです。
あなたは中小企業の営業戦略に詳しいコンサルタントです。
私の会社の情報をもとに、営業で使える「強み」を5つ挙げてください。
・会社: 【従業員9名の樹脂加工会社、創業35年】
・できること: 【小ロットの試作対応、図面がなくても現物から製作、短納期対応】
・既存客に言われること: 【他社に断られた案件を引き受けてくれる、連絡が早い】
・過去に受けた変わった依頼: 【医療機器メーカーの試作、大学の研究室からの1個だけの製作】
・苦手なこと: 【大量生産、価格勝負】
条件:
1. 「高品質」「誠実対応」など、どの会社でも言える表現は使わない
2. 強みごとに、その強みが刺さる相手(業種・立場)を書く
3. 強みを一言で言い表すキャッチコピーも各1案つける
4. 苦手なことを踏まえ、狙わないほうがいい相手も挙げる
最後の「狙わないほうがいい相手」が、実は最も役に立ちます。
限られた時間で営業する以上、どこに行かないかを決めることが重要だからです。
次に、誰に連絡するかを決める
強みが決まったら、相手を決めます。
ここでもAIに考えを整理してもらいます。
先ほど整理した強みをもとに、私が新規開拓すべき顧客像を3つ提案してください。
条件:
1. 業種、企業規模、担当者の役職まで具体的に書く
2. その相手が今抱えていそうな困りごとを3つずつ書く
3. 当社がその困りごとをどう解決できるかを書く
4. 【○○県とその隣接県】の範囲で現実的に見込みがある相手にする
5. 3つのうち、最も早く成果が出そうな順に並べる
ここで出てくるのは、あくまで仮説です。
ただ、仮説がないまま飛び込み営業を続けるより、はるかに効率的です。
実際の企業リストは、地元の商工会議所の名簿、業界団体の会員一覧、自治体の企業データベースなど、公開されている情報から作れます。
連絡の文面を作る
相手が決まったら、最初の接触です。
ここで長文のメールを送っても、まず読まれません。
【従業員50名程度の医療機器メーカーの開発担当者】に、初めてメールを送ります。
文面を作ってください。
・当社: 【従業員9名の樹脂加工会社】
・伝えたい強み: 【小ロット・図面なしの試作対応、最短3日】
・お願いしたいこと: 【一度、試作の相談先として名前を覚えてもらうこと】
条件:
1. 件名を3案つける
2. 本文は300字以内にする
3. 売り込みの前に、相手の困りごとに触れる
4. 初回から見積や訪問を求めない
5. 最後は、返信しやすい一言で終える
営業に慣れていない社長ほど、説明を詰め込みすぎる傾向があります。
300字という制限をAIに守らせることで、読まれる文面になります。
断られた理由も、AIに整理してもらう
新規開拓は、断られるのが当たり前です。
大切なのは、その理由をためて分析することです。
「価格が高い」「今は間に合っている」「実績がないので不安」。
こうした反応を10件ほどメモにためたら、AIに貼り付けて聞いてみてください。
以下は、新規開拓で断られた理由のメモです。
【10件分のメモを貼り付ける】
これを分類し、次の3点を教えてください。
1. 最も多い断り文句と、その裏にある本当の理由
2. 資料や説明を変えれば解消できるもの
3. そもそも狙う相手を変えるべきだと考えられるもの
断られた理由の中に、次の一手が入っています。
気をつけたいこと
営業メールを送る際は、特定電子メール法に注意してください。
広告や宣伝を含むメールを送る場合、原則として事前の同意が必要とされ、送信者の氏名や連絡先の表示、受信拒否の方法の明示などが求められます。
公開されている問い合わせフォームからの連絡であっても、相手が望まない大量送信は避けるべきです。
また、AIが出した企業名や統計をそのまま信じないでください。
AIは実在しない会社名や誤った数字を、もっともらしく書くことがあります。
相手の情報は、必ず公式サイトなどで確認してから使ってください。
よくある質問
Q. 営業経験がまったくありません。それでもできますか?
A. できます。むしろ、経験がない人ほどAIの整理が役に立ちます。「誰に、何を、どう伝えるか」が決まっていれば、あとは実行するだけだからです。
Q. AIに企業リストを作らせてもいいですか?
A. リストの「条件」を考えさせるのは有効ですが、企業名そのものをAIに出させるのはおすすめしません。実在しない企業が混ざるおそれがあります。名簿や公開データベースから集めてください。
Q. どのくらいの期間で成果が出ますか?
A. 業種にもよりますが、初回接触から受注まで数か月かかるのが一般的です。まずは3か月、月に10件の接触を続けるといった形で、行動量を目標にするほうが続きます。
まとめ
新規開拓に踏み出せない理由は、時間ではありません。
誰に、何を、どう伝えるかが決まっていないからです。
そこはAIに整理させて、社長は動くことに時間を使う。
最初の目標は受注ではなく、10件に接触することです。
営業・新規開拓にAIを活かしたい方へ: YouTubeチャンネル「社長のAI参謀」では、中小企業の社長向けにAIの使い方を動画で解説しています。
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