仕出し弁当の店の電話の横に、裏が白いチラシが1枚、セロハンテープで留めてあります。
書いてあるのは、質問と正の字です。
「何個から届けてくれる?」正の字が4つと、横棒が2本。
「何日前までに頼めばいい?」正の字が3つ。
「法事のお膳はある?」「子ども用はある?」「領収書は会社名で出る?」
付け始めたのは、配達を担当している社長の息子です。
昼の配達から戻ると、午後の電話番は彼になります。
2週間で、同じ質問に答えた回数は60を超えていました。
そのたびに、盛り付けの手を止めて受話器を取っています。
手袋を外して、受話器を取って、答えて、また手袋をはめる。
ホームページには、答えが書いてあるつもりだった
店のホームページには、お弁当の写真と値段、配達できる地域が載っています。
社長は、必要なことは書いてあると思っていました。
写真の下の説明は、「季節の煮物」「炊き込みご飯」のような中身の話ばかりで、頼み方の話は1つもありません。
見直してみると、「10個以上で配達無料」は、ページのいちばん下に、小さな字で1行あるだけでした。
「何日前まで」は、どこにも書いていません。
社長と息子の頭の中では「3日前まで、法事は1週間前」と決まっていても、それは店の中の決まりです。
お客から見えなければ、電話で聞くしかありません。
正の字の紙を、文字に起こす
チラシの裏の質問を、そのままAIに渡すことはできます。
ただ、それだけでは答えの材料がありません。
AIは店の決まりを知りません。聞けば、よその店の決まりを借りてきたような答えを作ってきます。
そこで、社長がやったのは、質問の1行ずつに、いま電話で答えている言い方を書き足すことでした。
「何個から届けてくれる?」の横には、「10個から、9個以下なら店まで取りに来てもらう」。
「法事のお膳はある?」の横には、「ある、3,500円と5,000円、器は次の日に回収」。
答えに詰まった質問は、横を空けたままにしました。
質問の言い方は、正の字の紙に書いたとおりにしておきます。
同じ中身でも、「最低何個?」と聞く人もいれば、「少しでも来てくれる?」と聞く人もいます。
言い方が2つあれば、2つとも書いておきます。
AIには、答えを作らせない
書き足した紙を打ち直したら、その上に頼みごとを書いて、使っているAIに渡します。
下は、仕出し弁当の店に電話で聞かれた質問と、店がいま答えている内容のメモ。
これを、ホームページに載せる「よくある質問」にすること。
質問の文は、お客が電話で言った言い方に近いまま残す。
「最低注文数について」のような硬い見出しにしない。
答えは、メモに書いてあることだけで作る。
答えが空いている質問は、答えを作らずに「店で決める」と書いておくこと。
最後に、メモの答えどうしで食い違っている所があれば、別に書き出すこと。
「答えを作らずに」の1行を入れておくのは、店で決めていないことを、AIが決めてしまうからです。
たとえば当日の取り消しについて、何も書かずに頼むと、「前日の17時までは無料で承ります」のような答えがつきます。
文としては、どこもおかしくありません。
でも、この店はそんな決まりを作ったことがありません。
そのまま載せれば、お客から見れば店の約束になります。
答えのある質問は、こういう形で返ってきました。
Q. 何個から届けてくれますか?
A. 10個からお届けいたします。
9個以下のご注文は、店頭でのお受け取りとなります。
中身はメモのとおりです。
息子は、電話口で言うつもりで読んでみて、2行目を「9個までなら、店に取りに来てもらっています」に直しました。
電話で毎日言っている言い方のほうが、電話をかけてくる人には近いと考えたからです。
「お受け取りとなります」は、彼が一度も口にしたことのない言い方でした。
「店で決める」が、手間のかかる所
返ってきたQ&Aは14問でした。
そのうち3問に「店で決める」がついていました。
当日の取り消しはいつまでできるか。
アレルギーのある人の分は作り分けられるか。
配達の地域の外でも、数が多ければ届けてもらえるか。
どれも、これまで電話のたびに、そのときの様子で答えてきた質問です。
食い違いの一覧には、「配達料」が出ていました。
息子のメモでは「10個以上は無料」、社長のメモでは「市内なら10個以上で無料、市外は500円」。
2人は、同じ質問に、違う答えをしていたことになります。
この3問と食い違いの1つは、AIに相談しても決まりません。
社長と息子が、仕込みの終わった夕方に、調理場の作業台で30分ほど話して決めました。
アレルギーの質問は、「作り分けはしていません、原材料の一覧はお渡しできます」にしました。
調理場が1つしかない店で、作り分けたものを「入っていない」と言い切れる自信がなかったからです。
取り消しは、「3日前の15時まで。それより後は材料の分をいただきます」。
3日前の15時は、息子がその注文の分の魚と野菜を、市場に頼む電話をかける時刻です。注文の締めと、取り消しの締めが、同じ日にそろいました。
配達の地域の外は、「30個以上なら相談に乗ります」で、2人の言うことがそろいました。
配達料は、社長のメモのほうに合わせました。
載せる場所は、電話番号のすぐ下
「よくある質問」のページを作っても、ページの最後にリンクが1つあるだけでは、見つけてもらえません。
電話をかけようとしている人は、電話番号を探しています。
だから、電話番号のすぐ下に、聞かれる回数の多かった3問を、答えごと並べます。
何個から届けるか、何日前までか、配達料の3つです。
「何日前まで」の答えには、理由も1行つけました。
「煮物とだしの仕込みに2日かかり、その前の日に、材料を市場へ頼むためです」
日にちだけ書くより、急ぎのお客が「それなら無理か」と自分で判断しやすくなります。
残りの11問は、「ほかの質問はこちら」のリンクの先に置きました。
同じQ&Aを印刷して、ファクスの注文用紙の裏にも刷っています。
この店では、法事の注文の多くが、年配のお客からファクスで届くからです。
載せたあとも、チラシの裏の正の字は続けます。
載せた質問の正の字が増え続けるなら、置き場所か言い方がまだ合っていない、という印になります。
14問のほかに、ページに載せないと決めた質問が1つあります。
「もう少し安くならない?」
数や日によって、社長が電話口で答えを変えているからです。
載せたのは14問。電話番号の下に3問、リンクの先に11問。
載せなかったのは1問です。
電話で聞かれることを、ページの側で答えておきたい方へ: このブログの運営者は「ことばとコード」の屋号で、小さな会社のホームページとLPを受けています。料金や頼み方のように、頼む人が知りたいことをそろえて、スマホで読みやすい形で公開します。原稿や写真が無くても、お話を聞いて文章の下書きをこちらで書きます。
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