人手不足の話をすると、多くの社長は採用の話を始めます。
求人を出しても応募がない。
媒体を変えても反応がない。
確かにそれも事実です。
ただ、いま起きていることの中心は、少し移動しました。
「人が来ない」から「人が辞める」へ。
2026年上半期の倒産のうち、人件費の高騰を原因とするものは120件で、前年同期の2.4倍になりました。
大企業の賃上げに追いつけず、既存の社員が抜けていく。
これが、いまいちばん怖い形です。
この記事では、社員が辞める前に出るサインをどう拾うかを整理し、生成AIを使って面談を設計する手順を紹介します。
登場する会社や人物に実在のモデルはなく、地方でよく聞く困りごとを組み合わせて描いた架空の設定です。
「突然辞める」は、ほとんど存在しない
退職の相談を受けた社長は、たいてい「突然だった」と言います。
ですが、辞めた本人に聞くと、まったく違う答えが返ってきます。
「半年前から考えていました」
「去年の冬には、もう決めていました」
つまり、突然だったのは社長にとってだけです。
本人の中では、長い時間をかけて決まっています。
そして、決まってしまってから引き止めても、まず戻りません。
退職を切り出された時点で、勝負はついています。
だから、その前の段階を見るしかないのです。
| 項目 | 2026年上半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 人手不足を主因とする倒産 | 237件 | 37.7%増 |
| うち人件費の高騰が原因 | 120件 | 約2.4倍 |
| 後継者不在を主因とする倒産 | 264件 | 14.7%増 |
人件費高騰による倒産が2.4倍になっているということは、賃上げ競争に巻き込まれた企業が実際に力尽きているという意味になります。
出典: 東京商工リサーチ「2026年上半期(1-6月)の全国企業倒産5,346件」(2026年7月8日公表)(https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203029_1610.html)、後継者難の件数は同「2026年上半期「後継者難」倒産 過去最多の264件」(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203041_1527.html)
参考までに、業種によって逼迫の度合いはまったく違います。
建設業の正社員不足率は69.6%で、51業種のトップです。
ソフトウェア開発や情報処理を含む「情報サービス」も69.2%でした。出典: 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」(2026年2月20日公表、有効回答1万620社)(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260220-laborshortage202601/)
こうした業種では、一人抜けた穴を埋めるのに1年以上かかることもあります。
辞める前に出る、5つのサイン
現場でよく言われるサインを挙げておきます。
1つ目、雑談が減る。
2つ目、有給の取り方が変わる(単発の平日休みが増える)。
3つ目、改善提案や不満を言わなくなる。
4つ目、新しい仕事を引き受けなくなる。
5つ目、飲み会や社内行事に来なくなる。
とくに3つ目が重要です。
不満を言う社員はまだ期待しています。
何も言わなくなったときが、いちばん危ない状態です。
ただ、これらのサインは社長には見えません。
社長の前では、みんな普通に振る舞うからです。
見えているのは、現場のリーダーや工場長です。
ですから、仕組みとして吸い上げる必要があります。
面談は「不満を聞く場」にしないほうがいい
ここでよくある失敗を1つ。
「何か不満はないか」と聞く面談です。
この聞き方では、まず本音が出ません。
不満を言えば評価が下がるかもしれない、と思われるからです。
そして社長は「特にありません」という答えを聞いて、問題なしと判断します。
聞き方を変える必要があります。
不満ではなく、事実と希望を聞く形にします。
この1年でやった仕事のうち、面白かったものはどれか。
逆に、しんどかったものはどれか。
3年後、どんな仕事ができるようになっていたいか。
この聞き方なら、答えやすくなります。
コピーして使える、面談設計のプロンプト
あなたは中小企業の人事に詳しいコンサルタントです。
社員との個別面談で使う質問シートを作ってください。
・業種と規模: 【従業員19名の自動車整備会社、地方都市】
・面談する相手: 【入社3年目、20代後半の整備士】
・面談の目的: 【定着。辞める理由になりそうなものを早い段階でつかみたい】
・こちらの事情: 【大企業のような賃上げは難しい。ただし休みの取りやすさや任せる仕事の幅では工夫できる】
・過去の失敗: 【「何か不満はある?」と聞いたら「特にありません」で終わってしまった】
次を作ってください。
1. 30分の面談で使う質問を、順番つきで8つ。答えやすい順に並べること
2. 各質問について、どんな答えが出たら注意すべきかの目安
3. 面談の最後に社長が伝えるべきことを3つ
4. やってはいけない質問と、その理由
相手が身構えないよう、詰問にならない言い回しにしてください。
この質問シートは、一度作れば毎回使えます。
そして、同じ質問を半年ごとにすることに意味があります。
前回の答えと比べられるからです。
次に、面談の記録を分析させます。
社員5名との面談メモを渡します。個人が特定されないよう、AさんBさんと表記しています。
【ここに面談のメモを貼り付ける】
次の3つを出してください。
1. 離職の可能性が高いと考えられる人と、その根拠になった発言
2. 複数の人に共通して出てきた不満や要望
3. 会社としてすぐ手を打てるものと、時間がかかるものの仕分け
2で共通の課題が見つかった場合、それは個人の問題ではなく仕組みの問題として扱ってください。
2番目が重要です。
一人が言っていることは個人の事情かもしれません。
三人が同じことを言っていたら、それは会社の問題です。
この切り分けは、社長一人では意外とできません。
個人情報の扱いだけは気をつける
面談メモをAIに入力するときは、実名を必ず伏せてください。
AさんBさんに置き換えれば、分析には十分です。
無料版の生成AIでは、入力内容が学習に使われる設定になっている場合があります。
社員の評価や健康に関する情報は、特に慎重に扱う必要があります。
まとめ
いまの人手不足は「人が来ない」より「人が辞める」に重心が移っています。
人件費高騰による倒産は、前年同期の2.4倍になりました。
そして、突然辞める社員はほとんどいません。
突然だったのは、社長にとってだけです。
サインは現場に出ていますが、社長からは見えません。
だから、半年に1度の面談を仕組みとして回してください。
聞くのは不満ではなく、事実と希望です。
質問シートは、今日30分あればAIで作れます。
社員の定着に取り組みたい方へ: YouTubeチャンネル「社長のAI参謀」では、中小企業の社長向けにAIの使い方を動画で解説しています。
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