「情報が漏れそうで社員に使わせられない」中小企業のAI利用ルールをA4 2枚で作る

仕事効率化・副業

「AIは便利らしい」。

「でも、社員に自由に使わせて、うちの情報が漏れたらどうするのか」。

この不安を理由に、AIの導入そのものを止めている会社があります。

一方で、社長が知らないうちに、社員が個人のスマートフォンでAIを使っている会社もあります。

実は、後者のほうが危険です。

この記事では、専門知識がなくても作れる、A4用紙2枚のAI利用ルールの作り方を紹介します。

登場する会社は架空です。社内でよく起きる状況を、例として組み立てて描いています。

よくある状況: 従業員18名の地方の設計事務所。会社としてAIの利用ルールは定めていない。社長が確認したところ、若手社員3名が個人のアカウントでChatGPTを業務に使っており、うち1名は取引先の図面情報を入力していた。

「禁止」が最も危険な選択になる理由

情報漏えいを心配して、AIの利用を全面禁止にする会社があります。

気持ちは分かりますが、これは多くの場合うまくいきません。

禁止しても、社員は個人のスマートフォンで使うからです。

そして、会社が把握していない場所で使われるほうが、リスクは高くなります。

何を入力したか、誰も分からないためです。

ですから、現実的な選択肢は「ルールを決めて、その範囲で使わせる」ことになります。

中小企業のルールは、A4で2〜3枚あれば足りる

大企業のような分厚い規程は必要ありません。

国が示している考え方も、実は中小企業にとって難解なものではありません。

総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」を公表しており、令和7年3月28日に第1.1版が出ています。

このガイドラインは、AIを開発する側・提供する側・利用する側それぞれが何に気をつけるべきかを整理したもので、本編で基本的な考え方を、別添で具体的な進め方を示す構成になっています。

とはいえ、従業員十数名の会社がこれをそのまま社内規程にするのは現実的ではありません。

実務では、押さえるべきリスクを「情報漏えい」「著作権」「品質管理」の3つに絞り、A4で2〜3枚にまとめ、半年ごとに見直す形が扱いやすいでしょう。

最低限、次の5項目が決まっていれば運用できます。

最低限決めるべき5項目:
項目決める内容の例
1. 使ってよいツール会社が指定したサービスのみ。個人アカウントでの業務利用は不可
2. 入力してはいけない情報個人情報、顧客情報、機密情報、取引先固有の情報、契約書の全文など
3. 生成物の扱いAIの出力は初稿とし、最終判断は必ず人が行う
4. 適用範囲役員・社員・パート・アルバイト・業務委託先まで
5. 相談・報告先判断に迷ったときの相談先と、問題が起きたときの報告先

この5項目を決めることが、ルール作りの中身のほとんどです。

ルールの草案をAIに作らせる

皮肉なようですが、AI利用ルールの草案作りにもAIが使えます。

プロンプト例(AI利用ルールの草案):
あなたは中小企業の社内規程づくりに詳しい専門家です。
生成AIの社内利用ルールを、A4用紙2枚程度で作ってください。

・会社: 【従業員18名の設計事務所】
・業務内容: 【住宅・店舗の設計、図面作成、施主との打ち合わせ】
・想定する使い方: 【メール文面の作成、提案資料の下書き、議事録の整理】
・特に守りたい情報: 【施主の個人情報、取引先から預かった図面、見積の単価】

条件:
1. 目的、適用範囲、使ってよいツール、入力禁止情報、生成物の確認手順、相談窓口、見直し時期の順に構成する
2. 法律用語を避け、パート社員が読んで分かる言葉で書く
3. 禁止事項だけでなく、推奨する使い方も具体例で書く
4. 違反があった場合の対応方針も1項目入れる
5. 最後に、社員向けの説明会で話すべきポイントを5つ挙げる

出てきた草案を、そのまま施行しないでください。

見るところは2つです。

ひとつは、自社の実態と合っているか。

使っていない業務が入っていたり、逆に肝心の業務が抜けていたりします。

もうひとつは、就業規則との整合です。

違反したときの取り扱いを定めるなら、社会保険労務士など専門家に一度目を通してもらってください。

「入力禁止情報」は具体名で書く

ルールが守られない最大の原因は、抽象的すぎることです。

「機密情報を入力しないこと」と書いても、何が機密なのか人によって解釈が違います。

そこで、自社の言葉で具体的に書きます。

入力禁止情報の書き方の例:
抽象的な書き方具体的な書き方
個人情報を入力しない施主の氏名・住所・電話番号・メールアドレスは入力しない
機密情報を入力しない取引先から預かった図面データ、見積の単価表、原価に関する数字は入力しない
注意して使う迷ったら入力せず、まず【○○(役職)】に相談する

「迷ったら相談する」の相談先を明記することが、実務上とても大切です。

相談先がないと、社員は自己判断で入力してしまいます。

設定を1つ確認しておく

ルールと合わせて、ツール側の設定も確認してください。

主要な生成AIサービスには、入力した内容をAIの学習に使わせない設定や、法人向けプランが用意されています。

無料版と有料版、個人向けと法人向けで扱いが異なる場合があるため、利用するサービスの公式ページで最新の内容を確認してください。

会社として使うサービスを1つに決め、その設定を確認しておくだけで、リスクは大きく下がります。

国のガイドラインも、定期的に更新されている

前述のAI事業者ガイドラインは、一度作って終わりの文書ではありません。

技術の進展に合わせて内容を見直していく「リビングドキュメント」として運用されており、第1.1版では生成AIに関する記載が拡充されています。

国の考え方そのものが更新され続けている以上、自社のルールを一度作って放置するのは危険です。

原文は総務省・経済産業省のサイトで公開されているので、ルールを作る前に目次だけでも眺めておくと、方向性を外しません。

参考: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」令和7年3月28日(https://www.soumu.go.jp/main_content/001002576.pdf)

ルールは作って終わりにしない

ルールを作ったら、必ず全員に説明してください。

配布するだけでは読まれません。

30分の説明会で、実際にAIを画面に映しながら「これは入力してよい」「これは駄目」を見せるのが最も効果的です。

そして、半年に1回は見直してください。

AIのサービス内容も、国のガイドラインも、短い期間で変わっていきます。

よくある質問

Q. 社員が数名しかいなくてもルールは必要ですか?
A. 必要です。人数が少ない会社ほど1人あたりの裁量が大きく、判断が個人任せになります。A4で2枚あれば足りるので、早めに作っておいてください。

Q. 無料版のAIは、業務で使ってはいけませんか?
A. 一概に禁止する必要はありませんが、入力内容の扱いはサービスごとに異なります。顧客情報や機密情報を扱わない用途に限る、といった線引きをルールに書いておくと安全です。

Q. すでに社員が勝手に使っていました。どう対応すべきですか?
A. まず何を入力したかを確認してください。責めるのは後です。処罰を先に持ち出すと、次からは隠れて使われ、何も把握できなくなります。

まとめ

禁止しても、使う社員は使います。

見えないところで使われるほうが、よほど怖い。

だからルールを決めて、その範囲で使ってもらう。

A4で2〜3枚、決めることは5つだけです。

作ったら30分でいいので、画面を見せながら全員に説明してください。

配って終わりにすると、まず読まれません。

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