「カーポート設置工事 K様邸」
見出しの下に、工事前と工事後の写真が2枚ずつ。説明の文は、1行もありません。
同じ形の事例が、ホームページに14件並んでいます。
写真はよく撮れています。屋根の柱はまっすぐで、土間のコンクリートには水たまりの跡もない。
それでも、見ている人の頭には「で、この家の人は何に困っていたの」が残ります。
写真だけでは、自分の家と重ねられない
施工事例を見に来る人は、まだ何を頼むか決めていないことが多いものです。
雨の日、車から玄関までの3メートルで子どもが濡れる。隣の家の窓と、うちの庭が向かい合っている。
困っているのはそういうことで、「カーポート」や「目隠しフェンス」という工事の名前は、あとから知ります。
写真だけの事例は、工事の名前を知っている人にしか届きません。
困りごとから書いてあれば、「うちも同じだ」と読んだ人が、そこで手を止めます。
文の材料は、見積もりのときのメモにある
事例の文を一から考える必要はありません。
材料は、たいてい社長のバインダーに挟まっています。
最初に現地を見に行ったときのメモ。お客が言った「朝、ゴミ出しのときに足元が暗い」の走り書き。
2案出して、片方を選ばなかった理由。LINEで届いた「来週は雨らしいけど大丈夫ですか」。
引き渡しの日に、お客がひとこと言ったこと。
これを、1件ごとにスマホのメモに打ち直します。きれいな文にしなくていい。箇条書きでも、単語だけでも構いません。
困りごとの順に、AIに並べさせる
ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも、文を作るだけなら、たいてい無料の範囲で足ります。
打ち直したメモの上に、頼みごとを書き添えます。
外構工事の会社のホームページに載せる、施工事例の材料メモがある。文章にはまだしない。下のメモを、次の順に並べ替えるところまで。
・工事の前に、お客が困っていたこと(お客の言葉があればそのまま)
・相談のきっかけ
・こちらが出した案と、選ばれなかった案、その理由
・工事の日数と、途中で起きたこと
・終わってから、お客が言ったこと
メモに無いことは書かない。足りない所は「メモに無し」と書いておくこと。
いきなり文章にさせないのは、並べた段階で抜けが見えるからです。
「選ばれなかった案」が「メモに無し」なら、社長に聞けばすぐ分かります。
抜けを埋めてから、「この並びのまま、400字くらいの文にする。語りは会社の側から、です・ます調で。メモに無いことは書かない」と頼みます。
書き出しは、たとえばこうなります。
「雨の日は、車から玄関までの3メートルで、下のお子さんが濡れてしまう。最初のお電話は、そういうご相談でした。」
工事の名前は、2段落目でようやく出てきます。それで構いません。
AIは、お客の喜びを勝手に書く
それでも、返ってきた文の最後に、こういう1行がついてくることがあります。
「お客様からは『毎日の暮らしが快適になった』と大変喜んでいただきました」
「メモに無いことは書かない」と頼んであっても、事例の文は最後をお客の声で締めるもの、という型のほうが勝ってしまうことがあります。
メモを見返すと、引き渡しの日にお客が言ったのは「これで朝、傘を2本持たなくて済むね」でした。
読む人には、作った言葉と本物の言葉の区別がつきません。お客が言っていないことは、載せません。
傘を2本、のほうを残します。
雨の朝、上の子には子ども用の傘を持たせ、自分は下の子を抱いて大人の傘をさす。車に乗せるたびに、2本の傘をたたんで足元に押し込んでいた。その朝のことが、この一言で分かります。
感想を聞いていない事例なら、感想の段落ごと消します。困りごとと、やったことだけで、事例は成り立ちます。
見出しにも、困りごとを入れる
文ができたら、最後に見出しを見直します。
「カーポート設置工事 K様邸」のままだと、一覧のページで14件が同じ顔に見えます。
一覧で目に入るのは、写真と見出しの1行です。そこに困りごとが書いてあれば、文を開く前に「うちのことだ」と分かる。
下の施工事例の文に、見出しの案を5つ。
お客が工事の前に困っていたことを、お客の言葉に近い形で入れる。工事の名前は後ろに小さく添える程度にする。
25字以内。「快適」「安心」「理想の」のような、どの事例にも使える言葉は使わない。
5つのうち、そのまま使えるのは1つあるかどうかです。
それでも、並べてみると、自分で考えるときの足場になります。
社長が最後に選んだのは、AIの案を少し削った「傘を2本持たなくていい玄関に(カーポート)」でした。
写真のファイル名も、このときに直しておきます。「IMG_4031.jpg」より「carport-genkan.jpg」のほうが、あとで探すときに自分が助かります。
載せる前に、お客に読んでもらう
写真に家の外観が写っている以上、近所の人が見れば、どの家かは分かります。
文がつくと、その家の暮らしまで少し見えるようになる。
書いた文は、載せる前にお客に見せます。印刷して持っていくか、LINEで送るか。
「この文で事例に載せてもいいですか。直したい所があれば言ってください」と一言添えます。
お客の言葉をそのまま引いた所には、蛍光ペンで線を引いておきます。自分の言ったことが会社のホームページに載るのは、文全体より、そこが気になるものです。
地名は「市」までにする。見出しの「K様邸」も、お客が嫌がれば「市内のお宅」に変えます。
断られた事例は、写真だけの形のまま残すか、下げます。
返事をもらったLINEの画面は、スクリーンショットを撮って事例のフォルダに入れておきます。何年かして担当が代わっても、載せてよいと言われた事例かどうかが分かります。
14件のうち、文がついたのは2件
最初に書いたのは、去年の秋のカーポートの事例でした。メモの打ち直しに20分、AIとのやりとりと手直しに30分ほど。
お客に見せたら、「傘のくだりは、奥さんに言われて気づいたんです」と、1か所直しが入りました。
2件目は目隠しフェンスで、こちらは見積もりのときのメモがほとんど残っていなかった。
困りごとの欄は「メモに無し」のまま、社長が覚えていた「洗濯物を干すとき、隣の台所と目が合う」の1行で埋めました。
残りは12件。
社長は事例の一覧の並び順を入れ替えて、文のついた2件をいちばん上に置きました。
事例を足していけるホームページにしたい方へ: このブログの運営者は「ことばとコード」の屋号で、小さな会社のホームページを、原稿を書くところから公開まで受けています。WordPressでつくるので、工事が終わるたびの実績は、管理画面から自分で足していけます。
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登場する人と会社に、実在のモデルはありません。アイキャッチのイラストはAI生成です。


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