AIの答えをそのまま客に出す前に。社内で決めておく確かめ方

AIの答えをそのまま客に出す前に。社内で決めておく確かめ方 仕事効率化・副業

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「旧型番のブラケットと新型番は、取付穴の位置が同じですので、そのままお使いいただけます」

機械部品を扱う卸の会社で、入社3年目の営業がお客に送ったメールの一文です。

下書きはAIに作らせました。お客の質問を貼って、「丁寧な返信を」と頼んだら、30秒で出てきた。

文は丁寧で、敬語にも間違いはありませんでした。

間違っていたのは、取付穴の位置です。メーカーのカタログでは、新型番は穴の間隔が4ミリ広くなっていました。

お客は20個を発注し、届いた日に現場から電話がかかってきました。

「AIを使うな」では、また同じことが起きる

こういうことがあると、社長の口から最初に出るのは「お客に出すものにAIを使うな」です。

言われた社員は、使うのをやめるか、黙って使い続けるか、どちらかになります。

黙って使われると、会社からは何も見えません。

今回のメールも、AIで書いたものだと分かったのは、電話のあとで本人が言ったからでした。

止めるより、出す前の確かめ方を1つ決めておくほうが、社員は言い出しやすくなります。

使い方のルール全体を作るのは、別の大仕事です。ここで決めるのは、お客に出す前の手順だけにします。

確かめるのは、お客がそのとおりに動く所

AIの書いた文を、頭から全部疑って読むのは無理があります。1通のメールに20分かけていたら、仕事が回りません。

見るのは、お客がその文を読んで、そのとおりに動く所だけにします。

寸法、数量、価格、納期といった数字。

型番、メーカー名、規格の名前、法律や制度の名前。

「使えます」「間に合います」「対応しています」のような、会社が約束する言い方。

数字の中では、日付の言い方にも気をつけます。AIが「今週中にお届けします」と書いたら、それが金曜の夕方なのか土曜の朝なのか、お客とこちらで読み方が分かれます。表に出てきたら、日付と曜日に書き換えます。

あいさつや季節の言葉が多少おかしくても、お客は発注を間違えません。間違えるのは、この3種類を信じたときです。

抜き出しまでは、AIにやらせてよい

長い文から数字や型番を拾うのは、目で追うと見落とします。

ここはAIに手伝わせます。下書きを作った画面とは別に、新しい画面を開きます。頼む文を先に打ち、その下に下書きを貼ります。

貼る前に、下書きの宛名とお客の会社名は「〇〇様」に置き換えておきます。抜き出しに、お客の名前は要りません。

確かめる所を抜き出す文:
下の文は、お客に送る前のメールの下書き。
この中から、次のものをすべて抜き出して、表にすること。
・数字(寸法・数量・価格・日付・期間)
・型番、会社名、規格や制度の名前
・「できる」「間に合う」「使える」「対応している」など、こちらが約束している言い方
表の列は「文中の言葉」「見る原本」の2つ。「見る原本」には、何を見れば確かめられるかを書く。
正しいかどうかの判断はしない。文の書き直しもしない。

「判断はしない」と書いておかないと、AIは表の横に「この内容は正確です」と書き添えることがあります。

そう書いてあっても、AIが原本を見て確かめたわけではありません。

冒頭のメールでいえば、表には「旧型番・新型番」「取付穴の位置が同じ」「そのままお使いいただけます」の3行が並びます。

照らし合わせるのは、社内の原本

表ができたら、1行ずつ、会社にある原本と照らし合わせます。

寸法と型番ならメーカーのカタログか図面。価格なら社内の価格表。納期なら在庫の画面か、仕入れ先への確認。

AIにもう一度「これは正しいですか」と聞くのは、確かめたことになりません。同じ相手に答え合わせを頼んでいるだけです。

照らし合わせたら、表の右に「結果」の列を足して、「カタログ2025年版 p.48で確認」のように、見た場所まで書き込みます。

原本が見つからない行は、文から消すか、「メーカーに確認のうえ、改めてご連絡します」に書き換えます。

約束の言い方の行だけは、送る前に、もう1人に見せます。課長でも、隣の席の先輩でも構いません。見せるのは表だけなので、1分で済みます。

冒頭のメールで照らし合わせをしていたら、表はこうなっていたはずです。

照らし合わせたあとの表(例):

文中の言葉 見る原本 結果
旧型番・新型番 メーカーのカタログ 型番は合っている
取付穴の位置が同じ カタログの寸法図 違う。新型番は間隔が4ミリ広い
そのままお使いいただけます 上の行しだい 消す。書き換えた文を課長に見せる

2行目で止まれば、3行目は自然に消えます。

送るはずだったメールは「新型番は取付穴の間隔が異なります。旧型番の在庫を確認のうえ、本日中にご連絡します」くらいで足ります。AIに整えてもらってもいいし、そのくらいなら自分で打ったほうが早い。

困るのは、照らし合わせる先が紙になっていない場合です。

「この部品は、あの客先の古い機械にも付く」のような話は、ベテランの営業が覚えているだけで、カタログには載っていないことがあります。

そういう行は、結果の列に「〇〇さんに確認」と名前を書きます。聞いた日付も一緒に。

同じ名前が何度も並ぶようなら、その人の頭の中を紙にする仕事が、別にあるということです。

表は、送ったメールと一緒に残す

照らし合わせた表は、捨てずに残します。

送ったメールの控えと同じフォルダに、日付とお客の会社名をつけて入れておく。

あとでお客から「前にこう書いてありましたよね」と言われたとき、何を見て書いたのかを、その場で示せます。

AIの下書きを使ったかどうかも、表の上に1行書いておきます。使ったことを隠さずに済む形にしておくと、次に聞きやすい。

この表は、AIを使わずに書いたメールにもそのまま使えます。

営業が自分の記憶だけで「穴の位置は同じです」と書いても、間違えるときは間違えます。AIのときだけ確かめる決まりにすると、「自分で書いた」と言えば通る抜け道ができてしまう。

この卸の会社では、慣れるまでは1通に10分ほどを見込んでいます。

見積もりの数字が多いメールなら、もっとかかる。そこは、仕方がないと割り切ることにしました。

来週の月曜、4人で同じメールを見る

この卸の会社では、来週の月曜の朝、営業の4人が会議室に集まることになっています。

配るのは、ブラケットの件のメールを1通。お客の名前は消してあります。

4人それぞれが、抜き出しの文を使って表を作り、何行になったかを比べます。

行の数がそろわなかったら、どこで差が出たのかをその場で見る。

抜き出しの表も、AIが作る以上、1行落とすことがあります。4人で行数を比べるのは、その落ちた1行を、送る前の手順の中で拾うためです。

そのあとで、「見る原本」の欄に書く名前を、カタログ、価格表、在庫の画面、と社内でそろえていきます。

時間は30分。決まった原本の名前は、表のひな形の「見る原本」の欄に、最初から印刷しておきます。

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