求人を出す前に。自社の採用ページに「働く人の1日」をAIで書き起こす

求人を出す前に。自社の採用ページに「働く人の1日」をAIで書き起こす 仕事効率化・副業

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面接が終わりかけたところで、応募してきた31歳の男性が、ひとつだけ質問をしました。前は食品工場でライン作業をしていた人です。

「現場まで、自分の車ですか」

社長は「会社の軽トラに乗り合わせ。ガソリン代はかからないよ」と答えました。相手の肩が少し下がったのが分かった、と社長は言います。

空調と給排水の工事をしている、従業員18名の設備工事会社です。いまの答えは、会社のホームページのどこにも書いてありませんでした。

採用ページにあるのは「アットホームな職場です。未経験の方も先輩が丁寧に教えます」の2行と、給与と休日の表。写真は社屋の外観が1枚。作ってから3年、誰も触っていません。

社長は「うちは本当にアットホームなんだけどね」と言います。たぶん本当です。昼は事務所の2階で、みんなでテレビを見ながら弁当を食べている。それも、ページには無い。

(ここに出てくる会社と人は、よくある例を組み合わせた作り話です。)

応募する前に知りたいのは、朝の時刻と昼の場所

求人を見て迷っている人は、自分がそこで働く1日を、頭の中で組み立てようとしています。

何時に家を出ればいいのか。現場へは自分の車で行くのか、会社の車に乗り合わせるのか。

昼はどこで食べるのか。夏の屋根裏には何分くらいいるのか。

「アットホーム」と「丁寧に教えます」からは、その1日が組み立てられません。面接の最後の質問は、そこが空いたままだったから出てきたのだと思います。

それで、採用ページに1人分の1日をそのまま載せることにしました。時刻つきで。

入社3年目の人に、先週の水曜日のことを聞く

選ぶのはベテランではなく、入って2〜4年くらいの人がいい。応募してくる人と年が近く、入ったころに戸惑ったことをまだ覚えています。

この会社では、27歳の工事担当の人に頼みました。前は運送会社で配達をしていた人です。

「いつもの1日を教えて」と聞くと、「朝来て、現場行って、帰ってきます」で終わってしまう。なので、特定の1日を聞きます。

聞くことのリストは、AIに作らせると早い。ChatGPT、Claude、Geminiのどれかに、登録して使える無料の範囲で頼めます。

質問を作ってもらう文(そのまま貼れます):
設備工事会社(空調・給排水)で働く入社3年目の社員に、「先週の水曜日の1日」を思い出して話してもらいます。
会社の採用ページに載せるための聞き取りです。
起きた時刻から家に帰るまでを、時間の順に聞いていく質問を15個作ってください。
時刻、移動の手段、誰と一緒だったか、昼に何を食べたか、困ったこと、先輩に聞いたこと、が答えに出てくる聞き方にしてください。
「やりがい」「成長」のような大きな言葉を引き出す質問は入れないでください。

返ってきた15個は、社長が上から読んで、本人が答えにくそうなものに線を引きます。この会社では「残業は月に何時間くらいですか」を消しました。それは本人ではなく、会社が答えることです。

聞き取りは、事務所の隅で20分ほど。本人の了解を取って、スマホで録音しておきます。

聞き手は社長でないほうが、話が細かくなります。この会社では、隣の班の35歳の班長が聞きました。社長が同じ部屋にいると、「残業なし」のところで本人が一瞬こちらを見る、ということが起きるからです。

話したことを、時刻の表にしてもらう

録音を聞き返しながら、話の中身をメモに打ち込みます。言い間違いや脱線はそのままで構いません。

打ち込むときに、本人以外の名前は「先輩」「お客さん」に置き換えておきます。現場のお宅の住所や、元請けの会社名も同じです。

続けて渡す文:
下のメモは、さきほどの質問への答えです。
これを、採用ページに載せる「ある1日」として、時刻と短い文の表にしてください。
1行は40字以内。本人の言い方や言い間違いは、意味が通るならそのまま残してください。
本人が言っていないこと(気持ちや感想)は足さないでください。
――(ここにメモを貼る)――

返ってきた表の一部は、こうなりました。

ある水曜日(入社3年目・工事担当):
7:50 事務所に着く。自分の車は裏の砂利の駐車場へ
8:00 ホワイトボードで今日の現場を確認。先輩と2人で軽トラ
8:40 市内の歯医者さんの空調交換。室外機が2階のベランダ
12:00 コンビニで弁当。車の中で食べた。エアコンは切らない
13:10 配管の角度を先輩に聞いた。2回目。「3回目までは聞いていい」と言われた
16:30 事務所に戻って、日報をタブレットで書く
17:15 帰る。この日は残業なし

「3回目までは聞いていい」は、本人の口から出た言葉です。「先輩が丁寧に教えます」の1行より、どう教わるのかが見えます。

載せる前に、本人とパソコンの前で読む

表ができたら、本人に読んでもらいます。

この会社では、「車の中で食べた、は消したい」と言われました。いつもは2階で食べているのに、たまたまその日だけ外だったから、と。

そこは本人の言うとおりに直して、「12:00 事務所の2階で弁当。テレビは昼のニュース」に差し替えました。

名前は下の名前だけにするか、載せないか。顔写真は出すか、手元や後ろ姿にするか。

これも本人に決めてもらいます。辞めたあとも、ページには残るからです。

業務と就業場所の「変更の範囲」も、あわせて見直す

採用ページに募集要項の欄があるなら、1日の表を足すついでに、そこも読み直しておきます。令和6年4月から、募集のときに示す労働条件に3つの事項が加わっています。

令和6年4月から、募集時に明示する事項に加わったもの:
厚生労働省によると、職業安定法施行規則の改正で、令和6年4月から、募集の際に次の事項も明示することが必要になりました。
・従事すべき業務の変更の範囲
・就業の場所の変更の範囲
・有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項
同じく厚生労働省の求人企業向けリーフレットより: ただし求人広告のスペースが足りない等、やむを得ない場合には「詳細は面談時にお伝えします」などと付した上で、労働条件の一部を別途のタイミングで明示することも可能です。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、全ての労働条件を明示する必要があります。
同じリーフレットでは、ハローワークへの求人の申込みだけでなく、自社ホームページでの募集も、求人票や募集要項で労働条件を明示する場面として挙げています。

出典: 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html)
厚生労働省 リーフレット「求人企業の皆様へ」(https://www.mhlw.go.jp/content/001114110.pdf)

この会社は現場が市内と隣の町に散らばっているので、「就業の場所」の書き方は社長もすぐには決められませんでした。

採用ページで募集するなら、そこも明示の対象になります。自社の書き方で足りているかは、求人を出しているハローワークの窓口で聞くのが確かです。ここはAIに書かせずにおきます。

同じ15の質問を、今度は63歳の配管工に

採用ページには、1日の表と、2階で弁当を食べている部屋の写真が1枚増えました。テレビは写っていません。

表の下には「見学できます」の1行と、事務所の電話番号。受付は平日の8時から17時です。

次は、いちばん古い配管工の水曜日を聞きます。61歳、入社して29年。毎朝7時過ぎには、もう裏の駐車場にいる人です。

15の質問を刷ったA4の紙は、ホワイトボードの横にマグネットで留めてあります。聞くのは、雨で現場が止まった日の午後。聞き手は、今度も隣の班の班長です。

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