賃上げの原資が出ない会社が 粗利を1%動かすためにAIでやること

仕事効率化・副業

「賃上げしないと人が辞める」

「でも、上げる原資がない」

この2つの間で身動きが取れなくなっている社長は少なくありません。

実際、いまの中小企業の賃上げは、業績が良いから行われているわけではないのです。

2026年度に賃上げをする企業が挙げた理由は、「労働力の定着・確保」が74.3%で1位でした。

一方で「最低賃金の改定」を挙げた企業も29.2%と、過去最高になりました。

つまり、辞められたら終わるから上げている。

この記事では、賃上げの原資をどこから作るのかという一点にしぼり、生成AIを使って粗利を動かすための手順を紹介します。

登場する会社や人物に実在のモデルはなく、地方でよく聞く困りごとを組み合わせて描いた架空の設定です。

よくある状況: 従業員22名の地方の食品加工会社。昨年、社員の引き止めのために一律で月1万円のベースアップを実施した。年間の人件費増は約300万円。ところが売上はほぼ横ばいで、営業利益は前期の半分になった。今年もまた「上げないと辞める」という空気がある。

防衛的な賃上げは、続けると会社を壊す

賃上げそのものが悪いわけではありません。

問題は、原資のないまま繰り返すことです。

数字を見ると、その苦しさがはっきり出ています。

2026年の賃上げをめぐる数字:
項目数値
2026年度に賃金改善を見込む企業63.5%
ベースアップを実施する企業58.3%
賃上げの理由「労働力の定着・確保」74.3%
賃上げの理由「最低賃金の改定」29.2%
賃上げをしない理由「自社の業績低迷」55.1%

賃上げ理由は複数回答です。1位が「労働力の定着・確保」だという点に、いまの賃上げの性格が出ています。調査概要: 全国2万3,859社に調査、有効回答1万620社(回答率44.5%)、調査期間2026年1月19日〜1月31日。
出典: 帝国データバンク「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」(2026年2月24日公表)(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260224-wage2026/)

ここで注目したいのは、6%以上の賃上げを実施した企業が前年の半分に減っているという点です。

賃上げの必要性が下がったわけではありません。

単純に、体力が尽きてきているということです。

そして体力が尽きた会社から順に、人材の流出が始まります。

2026年上半期の倒産のうち、人件費の高騰を原因とするものは120件で、前年同期の2.4倍に増えました。

原資は「売上を増やす」より先に「粗利率」で探す

賃上げの原資を作るとき、多くの社長がまず売上を増やそうとします。

ですが、売上を10%増やすのは簡単ではありません。

営業を増やすにも人がいませんし、その人の給料がまた増えます。

先に手をつけるべきは、粗利率のほうです。

粗利率が1ポイント上がると、どれくらい効くのか。

年商3億円の会社なら、粗利は300万円増えます。

社員20名なら、一人あたり月1万円強の原資に相当します。

つまり、粗利率1%は「全社員に月1万円のベースアップができる金額」とほぼ同じなのです。

売上を3億から3億3千万に伸ばすのと、粗利率を1ポイント動かすの。

現実的に手が届くのは、後者です。

粗利率を動かす3つの入口

粗利率を上げる方法は、突き詰めると3つしかありません。

入口1: 単価を上げる

いちばん効きます。ただし、いちばん言い出しにくい。

参考になるのが、コストの転嫁率の数字です。

コストのうち、価格に転嫁できている割合:
コストの種類転嫁率
コスト全般53.5%
原材料費55.0%
労務費50.0%
エネルギーコスト48.9%

2025年9月時点の集計です。労務費の転嫁率がやっと5割に届いたということは、賃上げした分の半分は自社の負担のままだという意味になります。
出典: 中小企業庁「価格交渉促進月間(2025年9月) フォローアップ調査結果」(2025年11月28日公表、受注側中小企業30万社に調査)(https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251128002/20251128002.html)

入口2: 利益の出ていない仕事をやめる

これも効きますが、判断材料が手元にないことが多い。

「この仕事、実は赤字じゃないか」と薄々感じていても、計算していないというケースです。

入口3: 仕入れと外注の条件を見直す

10年変えていない取引条件が残っていることは珍しくありません。

コピーして使える、粗利を洗い出すプロンプト

ここでAIを使います。

やらせるのは分析ではなく、社長の頭の中にある情報を表に並べ替える作業です。

プロンプト例(商品・案件ごとの粗利を仕分ける):
あなたは中小企業の収益改善を専門とする経営コンサルタントです。
私の会社の商品と取引先の状況をお伝えしますので、粗利の観点から優先順位をつけてください。

・業種と規模: 【従業員22名の食品加工会社】
・年商: 【約3億円】
・主な商品と、それぞれのおおよその売上比率と粗利率:
 【商品A: 売上比率40%、粗利率18%】
 【商品B: 売上比率35%、粗利率25%】
 【商品C: 売上比率25%、粗利率10%】
・直近1年で上がったコスト: 【原材料が約12%、電気代が約20%、人件費が約5%】

次の3つを出してください。
1. 粗利率を全体で1ポイント上げるために、どの商品から手をつけるべきか。理由も添えて
2. 値上げを申し入れる場合、商品ごとに何%が妥当か。根拠となる考え方も
3. やめる・縮小する候補があれば、その判断基準

粗利率が分からない場合は、それも正直に書いてかまいません。

「粗利率を出していない」と伝えれば、まず何を集めるべきかを教えてくれます。

次に、賃上げの効果をシミュレーションします。

プロンプト例(賃上げの原資を逆算する):
私の会社は従業員22名で、年商は約3億円、営業利益は約600万円です。
来期、全社員に月1万円のベースアップを行いたいと考えています。

次を計算し、表にしてください。
1. 社会保険料の会社負担分も含めた、年間の人件費増加額
2. その金額をまかなうために必要な、粗利率の改善幅(ポイント)
3. 同じ金額を売上増でまかなう場合に必要な売上高

そのうえで、2と3のどちらが現実的か、中小企業の一般的な状況をふまえて意見を述べてください。

数字が出てくると、話が具体的になります。

「なんとなく苦しい」が「粗利率をあと1ポイント」に変わるからです。

賃上げ以外に、辞めない理由をつくる

もう1つ、忘れてはいけないことがあります。

賃上げは、辞めない理由の1つでしかありません。

地方の中小企業が大企業と給与で真正面から勝負しても、勝てないことのほうが多いのが現実です。

ですから、金額以外の理由も同時に作っておく必要があります。

たとえば、休みの取りやすさ。

たとえば、通勤時間の短さ。

たとえば、任される仕事の幅。

これらは、大企業には作れない価値です。

ただし、社長が思っているだけでは伝わりません。

求人票にも、面談にも、言葉として出しておく必要があります。

まとめ

いまの賃上げは、儲かったから上げているのではありません。

辞められたら終わるから上げています。

その状態のまま繰り返すと、原資が尽きて会社が壊れます。

原資は、売上を増やすより先に粗利率で探してください。

年商3億円なら、粗利率1ポイントが約300万円。

社員20名の月1万円と、ほぼ同じ金額です。

まずは商品ごとの粗利率を、AIに並べ替えてもらうところから始めてみてください。

賃上げの原資づくりを進めたい方へ: YouTubeチャンネル「社長のAI参謀」では、中小企業の社長向けにAIの使い方を動画で解説しています。

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