会社を継いだ二代目社長へ。先代のやり方を否定せずに変える伝え方をAIで整える

仕事効率化・副業

「前の社長はそんなやり方しなかった」

会議のあと、工場長にそう言われました。

社長を継いで8か月。この言葉を聞くのは4回目です。

言い返せば角が立つ。

飲み込めば何も変わらない。

この記事は、その板挟みを抜けるための整理の仕方です。

登場する会社に実在のモデルはありません。

よくある状況: 従業員27名の樹脂成形工場。社長は42歳、先代の長男。8か月前に交代した。先代は会長として週2日出社している。工場長は勤続28年で、先代とは30年の付き合い。

継いだ人は、いま少数派になりつつある

意外に思われるかもしれませんが、親から継ぐという形は、もう一番多い形ではありません。

帝国データバンクの調査に、事業承継の就任経緯別の割合が出ています。

2025年の事業承継 就任経緯別の割合:
就任経緯割合
内部昇格36.1%
同族承継32.3%
M&Aほか20.6%
外部招聘7.6%

調査概要: 帝国データバンク信用調査報告書ファイル「CCR」(200万社収録)の分析。全国・全業種 約27万社、分析期間は2023年10月〜2025年10月。2025年は速報値です。速報値段階で内部昇格が同族承継を上回りました。全国の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント低下し7年連続の改善です。
出典: 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/)

内部昇格が36.1%で、同族承継の32.3%を上回りました。

この数字は、二代目社長にとって二重の意味を持ちます。

1つは、社員から見れば「社長は他の道もあった中で、たまたま息子だった」ということ。

もう1つは、工場長のような人が社長になる会社も3割以上ある、ということです。

「前の社長は」と言う人は、自分がやってきたことを守りたいだけかもしれません。

工場長が「前の社長は」と言うとき、比べているのは経営方針ではありません。

自分が相談される側だったかどうかです。

否定と変更は、別のこと

継いだ人がやりがちな失敗があります。

変えたい理由を説明するときに、いまのやり方の悪いところから話し始めることです。

「この工程、無駄が多いので変えます」

正しいことを言っています。

ですが、その工程を作ったのは工場長です。

言われた側には「あなたの28年は無駄だった」と聞こえます。

順番を変えるだけで、伝わり方が変わります。

先に、なぜそのやり方になったのかを聞く。

だいたい理由があります。

昔クレームが出た。

ある機械の癖に合わせた。

ある取引先の要望だった。

そのうえで、その理由がいまも生きているかを一緒に確認する。

クレームを出した取引先は、5年前に取引が終わっているかもしれません。

そうなれば、変えるのは否定ではなくなります。

聞き方も、ひとつ決めておくと楽です。

「これ、なんでこうなってるんですか」だと詰問に聞こえます。

「この形にしたとき、何かあったんですか」に変えます。

主語が相手ではなく出来事になるので、責められている感じが消えます。

返ってきた話は、その場でメモを取ります。

手帳を開いて書くだけで、相手の口調が変わることがあります。

言い方をAIで作り直す

頭では分かっていても、その場では言葉が出ません。

会議の前に、言い方だけ作っておきます。

プロンプト例(変更の切り出し方を作る):
会社を継いだ二代目社長です。長く勤めているベテランに、やり方の変更を切り出したいのですが、否定と受け取られたくありません。

・会社: 【従業員27名の樹脂成形工場】
・相手: 【工場長。勤続28年。先代とは30年の付き合い。現場の信頼は厚い】
・変えたいこと: 【検品の記録を紙からタブレットにしたい】
・いまのやり方: 【手書きの検品表。10年以上続いている。工場長が作った様式】
・私の懸念: 【変えると「前の社長は」と言われる。過去に4回言われた】

次の3つを出してください。
1. 変更を切り出すときの言い方。実際に口に出せる会話文で。まず相手の20年を聞く形から始めること
2. 相手から「前のやり方で問題ない」と返ってきたときの応じ方を3パターン
3. 変更の判断を私が独断で決めない形にするなら、どんな進め方があるか

相手を説得する言葉ではなく、一緒に決める言葉にしてください。

最後の一文が要です。

これを書かないと、AIは説得のテクニックを出してきます。

28年いる人を説得しようとすると、勝っても後で効いてきます。

出てきた会話文は、そのまま読み上げないほうがいいです。

AIの日本語は少し丁寧すぎて、いつもの社長の口ぶりと違います。

違和感は相手に伝わります。

使うのは、話の順番だけでいい。

何を先に聞いて、何を後に回すか。

それだけ頭に入れて会議に入れば、言葉はその場で自分のものに置き換わります。

先代との線引きも、言葉にしておく

もう一つ、避けて通れないのが会長になった先代です。

週2日出社していると、社員はどちらに聞けばいいか分からなくなります。

そして人は、答えをくれるほうに聞きに行きます。

ここを曖昧にしたまま1年が過ぎると、社長は肩書だけになります。

紙に書くのは、たった2列です。

左に、いま自分が決めていること。右に、いまも会長が決めていること。

価格、採用、設備投資、取引先との交渉、金融機関との折衝、人事。

1つずつ、どちらかに置いていきます。

置けないものが出てきます。

それが問題の在りかです。

たとえば取引先との価格交渉。

社長が出した見積もりに、あとから会長が電話一本で色をつける。

これは左にも右にも置けません。

置けない項目には、印だけつけておきます。

数えてみると、たいてい3つか4つです。

全部を一度に動かそうとすると話がこじれるので、印のついたものから1つ選びます。

その表を持って、会長と話す。

「全部渡してください」ではなく、「この3つは、いつ私に移しますか」と聞く。

期限を入れると、話が感情から日付に変わります。

会長にとっても、いつまで何を持つのかがはっきりするほうが楽です。

渡す気がないわけではなく、渡すきっかけがないだけ、という場合が多い。

まとめ

「前の社長はそんなやり方しなかった」は、たいてい反対ではありません。

自分がやってきたことを認めてほしい、という合図です。

先代のやり方は、その時代には合っていた。

いまは条件が変わっただけで、誰かが間違っていたわけではありません。

だから順番を変えます。

なぜそのやり方になったのかを先に聞く。

その理由がいまも生きているかを、一緒に確認する。

そして、会長との決定権の線を紙に書いて、日付を入れる。

8か月で4回言われたなら、あと4年で24回です。

5回目の前に、聞き方を変えてみてください。

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