売上が落ちてくると、多くの社長はまず新規開拓を考えます。
新しい客を取れば、売上は戻る。
理屈としては正しいのですが、順番としては逆かもしれません。
新規の顧客を1件取るコストは、既存の顧客から追加の受注をもらうコストより、はるかに高いからです。
しかも人手が足りない会社では、営業に割ける時間そのものがありません。
この記事では、新規開拓の前にやるべき「既存客の深掘り」について、生成AIを使って優先順位をつける具体的な手順を紹介します。
登場する会社や人物に実在のモデルはなく、地方でよく聞く困りごとを組み合わせて描いた架空の設定です。
販路開拓に「取り組んでいない」会社が23%いる
まず、現状を数字で見ておきます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 新規顧客・販路の開拓に取り組んでいる | 約半数 |
| 取り組んでいない | 23% |
| 新規開拓に「取り組む必要がない」と回答 | 26% |
| 新規開拓につながった方法の1位 | 既存顧客・取引先からの紹介(58%) |
約半数が取り組んでいる一方で、4社に1社は着手できていないという状態です。
出所: 大同生命サーベイ(2026年4月度調査。回答5,036社。同サーベイは大同生命の契約企業を中心に実施されています)(https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/202604.html)
販路開拓が要ることは、たいていの社長が分かっています。
それなのに、4社に1社は着手できていません。
理由は、やる気の問題ではありません。
経営者アンケートの自由回答には、こうした声が並びます。
「他の業務が多忙過ぎて、顧客獲得に着手できていない」
「営業をしていないので、案件は紹介ベース」
つまり、時間がないのです。
時間がない会社が新規開拓から始めると、たいてい続きません。
既存客の深掘りが先である3つの理由
理由1: 相手がすでに自社を知っている
新規開拓では、まず信用してもらうところから始まります。
既存客なら、その工程が要りません。
提案の内容だけで判断してもらえます。
理由2: 何が売れるかの手がかりが手元にある
過去の受注履歴は、そのまま次の提案のヒントです。
ところが、多くの会社はそれを見返していません。
理由3: 離脱を防げる
いちばん大きいのはこれかもしれません。
取引先は、ある日突然いなくなるわけではありません。
発注の間隔が空き、金額が減り、担当者が変わり、そして切り替わります。
兆候は必ず数字に出ていますが、見ていなければ気づけません。
まず、取引先を並べ替えるだけでいい
やることは単純です。
取引先を、金額の大きい順に並べます。
そこに、直近の取引時期と、過去の受注内容を並べます。
それだけで、見えてくるものがあります。
上位3社で売上の何割を占めているのか。
1年以上取引のない会社が何社あるのか。
去年より金額が減っている会社はどこか。
この3つが分かれば、次にどこへ行くべきかは自然に決まります。
コピーして使える、深掘りリストのプロンプト
あなたは中小企業の営業戦略に詳しいコンサルタントです。
私の会社の取引先の状況をお伝えしますので、次にどこへ提案に行くべきか優先順位をつけてください。
・業種と規模: 【従業員11名の内装工事会社、地方都市】
・年商: 【約1億8,000万円】
・取引先の状況(社名は伏せてA社、B社…とします):
【A社: 年間4,200万円、直近の受注は先月、内容は店舗改装】
【B社: 年間3,100万円、直近は3か月前、内容は事務所の内装】
【C社: 年間1,800万円、直近は8か月前、昨年は2,900万円あった】
【D社: 年間600万円、直近は先週、内容は小規模な補修】
【E社: 昨年まで年間1,500万円、今年は取引ゼロ】
・自社が提供できるが、まだ売れていないもの: 【定期点検、原状回復工事、什器の手配】
次の4つを出してください。
1. 提案に行く優先順位と、その理由
2. 各社に対して、何を提案するのが自然か
3. 離脱の可能性が高い取引先と、その根拠
4. 提案に行く前に、社内で確認しておくべきこと
数字が正確でなくてもかまいません。
「だいたい」で並べても、優先順位はかなり見えてきます。
次に、実際に話す内容を用意します。
先ほどC社(昨年2,900万円、今年1,800万円、直近の取引は8か月前)に提案に行くことになりました。
次を作ってください。
1. 久しぶりに訪問する際の、自然な切り出し方を3パターン
2. 相手が発注を減らしている理由として考えられること5つと、それを失礼なく確認する聞き方
3. 定期点検を提案する場合の、相手にとっての利点の説明(専門用語なし、3行以内)
4. その場で値段を聞かれたときの答え方
私は営業が専門ではなく、職人あがりの社長です。
売り込みくさくならない言い回しにしてください。
最後の2行が効きます。
これを入れないと、営業マンのような台本が返ってきて、かえって使えません。
そのうえで、新規開拓に進む
既存客の深掘りをひととおり終えると、次の景色が見えてきます。
「うちが本当に売れているのはこれだ」という手応えです。
それが分かってから新規開拓に進むと、狙う相手がはっきりします。
逆に、それが分からないまま新規開拓を始めると、誰に何を売ればいいのか定まりません。
結果として、チラシを配って終わり、ホームページを作って終わり、になります。
順番が大事だというのは、こういう意味です。
まとめ
販路開拓が要ると分かっていても、4社に1社は着手できていません。
理由は時間がないことです。
時間のない会社が新規開拓から始めると、続きません。
先にやるべきは、既存客を金額順に並べ替えることです。
上位何社に依存しているか。
1年以上取引のない会社はどこか。
去年より減っている会社はどこか。
この3つが見えれば、来週どこへ行くべきかが決まります。
並べ替えの作業は、AIに任せれば30分で終わります。
既存客の深掘りを進めたい方へ: YouTubeチャンネル「社長のAI参謀」では、中小企業の社長向けにAIの使い方を動画で解説しています。
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