「うちの業務のどこにAIを使えるのか」が分からない社長へ。紙1枚で棚卸しする方法

仕事効率化・副業

AIの本を3冊買いました。

セミナーにも2回行きました。

それでも月曜の朝、パソコンの前に座ると手が止まる。

「で、うちのどこに使うんだ」

本にもセミナーにも、他社の事例しか書いていません。

この記事は、事例を探すのをやめて、自社の業務を1枚の表に並べ替える方法です。

登場する会社に実在のモデルはありません。

よくある状況: 従業員31名の地方の運送会社。社長は58歳。ChatGPTの無料版を登録したが、何を聞けばいいか分からず3回で開かなくなった。同業の集まりで「AI入れた?」と聞かれるたびに、話題を変えている。

事例が見つからないのは、あなたのせいではない

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査に、こんな設問があります。

社内の理解や情報が足りているか、というものです。

AI・IT導入をめぐる社内の状態:
設問当てはまらない計
成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている83.3%
適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある79.8%

調査概要: 全国の中小企業10,000社に配布、有効回答1,647社(2025年11月17日〜12月12日)。
出典: 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf)

83.3%の会社が、自分たちに近い事例を「十分に入手できていない」と答えています。

本を3冊読んでピンとこないのは、普通のことです。

事例が出てこないのには理由があります。

うまくいった会社は、わざわざ公表しません。

公表されるのは、ベンダーが売りたい大きな事例です。

31人の運送会社の話は、どこにも載っていません。

だから、外に探しに行くほど遠回りになります。

だから、事例探しをやめます。

先に自社の業務を並べて、そこから選ぶ。

3つの列で並べ替える

紙を1枚出して、縦に業務を書きます。

運送会社なら、配車、点呼記録、日報、請求書、運行管理の報告、求人票、荷主への提案書、社内の連絡、といったところです。

横に3つの列を作ります。

1つ目、時間。1回にどれくらいかかるか。

2つ目、頻度。月に何回やるか。

3つ目、ミスの痛さ。

間違えたときにどれくらい困るか。

大・中・小でいい。

時間と頻度を掛けると、月に何時間その業務に使っているかが出ます。

最初に手をつけるのは、その数字が大きくて、ミスの痛さが「小」のものです。

ここを外すと失敗します。

時間がかかっていても、ミスの痛さが「大」の業務、たとえば点呼記録や請求金額を最初に選んではいけません。

1回間違えると、二度と使わなくなるからです。

社長本人が使わなくなるだけなら、まだいい。

社員が見ていた場合、社内で「あれは使えない」という話になります。

一度そうなると、次に持ち出すのが難しくなります。

なぜ「文章を作る仕事」から始まるのか

この表を作ると、たいていの会社で同じところに丸がつきます。

荷主への提案書。求人票。社内の連絡文。日報のまとめ。

どれも、間違えても直せる文章仕事です。

同じ調査で、AIを導入した企業がどの分野に入れているかも出ています。

導入済み企業が使っているAI:
種類割合
生成AI(文章・資料作成、アイデア出し)82.6%
音声認識・音声対話AI(議事録作成、自動応答)29.8%
画像認識AI(外観検査、不良品検出)11.2%
需要予測AI(販売・在庫最適化)8.1%
異常検知AI(設備保全、予防保守)4.3%

調査概要: 全国の中小企業10,000社に配布、有効回答1,647社。この設問はAI導入済み企業のみ(回答322社)。
出典: 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf)

生成AIが82.6%で、2位の音声認識29.8%を大きく離しています。

外観検査や需要予測は、1割にも届いていません。

実際に入っているのは、派手なものではなく文章仕事です。

導入の目的も同じ方向を向いています。

「業務効率化・作業時間の短縮」が87.0%で、2位の「品質向上」32.3%を50ポイント以上引き離しています。

効果のほうも、業務効率化が83.2%で突出しています。

つまり、時間を減らすために使い、実際に減っている。

それ以上のことを最初から狙わなくていい、ということでもあります。

在庫の予測や設備の異常検知は、データが揃っている会社の話です。

日報が手書きの会社が、最初にやることではありません。

表を作るのが面倒なら、AIに作らせる

紙に書き出すのが億劫なら、そこもAIにやらせます。

プロンプト例(自社の業務を並べ替える):
自社の業務のうち、どれをAIに任せるか決めたいです。

・会社: 【従業員31名の運送会社、地方都市】
・事務所でやっている仕事: 【配車、点呼記録、日報の入力、請求書発行、運行管理の報告、求人票の作成、荷主への提案書、社内連絡、シフト調整】
・私の状況: 【社長。パソコンはメールとExcelが少し。AIは触ったことがほぼない】

上の業務を「時間×頻度」と「ミスの痛さ(大中小)」で表にしてください。
時間と頻度が分からないものは、同業の一般的な目安で仮に置き、仮であることを明記してください。

そのうえで、次を出してください。
1. 最初に任せるべき業務を1つ。ミスの痛さが小さく、時間の合計が大きいものから選ぶ
2. その業務を、AIにどう頼めばいいかの具体的な文章
3. 絶対に最初に任せてはいけない業務と、その理由

「仮であることを明記してください」を必ず入れてください。

これを書かないと、AIは知らない数字を断定で書いてきます。

仮の数字が出たら、それを見ながら実際の数字に直せばいい。

白紙に書くより、間違った表を直すほうが人間は速い。

この表は、社員に見せてもいい。

どれが一番時間を食っているかは、社長より事務の人のほうが正確に知っています。

まとめ

事例が見つからないのは、あなたの調べ方が悪いからではありません。

83.3%の会社が同じところで止まっています。

他社を見るのをやめて、自社の業務を「時間×頻度」と「ミスの痛さ」で並べる。

時間が大きくて、ミスの痛さが小さいものが1つ見つかれば、それが最初の仕事です。

たぶん、それは文章を作る仕事です。

紙は1枚でいい。

列は3つでいい。

本を4冊目に進む前に、それを書いてみてください。

何から始めるか決めたい方へ: YouTubeチャンネル「社長のAI参謀」では、中小企業の社長向けにAIの使い方を動画で解説しています。

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