AIの本を3冊買いました。
セミナーにも2回行きました。
それでも月曜の朝、パソコンの前に座ると手が止まる。
「で、うちのどこに使うんだ」
本にもセミナーにも、他社の事例しか書いていません。
この記事は、事例を探すのをやめて、自社の業務を1枚の表に並べ替える方法です。
登場する会社に実在のモデルはありません。
事例が見つからないのは、あなたのせいではない
中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査に、こんな設問があります。
社内の理解や情報が足りているか、というものです。
| 設問 | 当てはまらない計 |
|---|---|
| 成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている | 83.3% |
| 適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある | 79.8% |
調査概要: 全国の中小企業10,000社に配布、有効回答1,647社(2025年11月17日〜12月12日)。
出典: 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf)
83.3%の会社が、自分たちに近い事例を「十分に入手できていない」と答えています。
本を3冊読んでピンとこないのは、普通のことです。
事例が出てこないのには理由があります。
うまくいった会社は、わざわざ公表しません。
公表されるのは、ベンダーが売りたい大きな事例です。
31人の運送会社の話は、どこにも載っていません。
だから、外に探しに行くほど遠回りになります。
だから、事例探しをやめます。
先に自社の業務を並べて、そこから選ぶ。
3つの列で並べ替える
紙を1枚出して、縦に業務を書きます。
運送会社なら、配車、点呼記録、日報、請求書、運行管理の報告、求人票、荷主への提案書、社内の連絡、といったところです。
横に3つの列を作ります。
1つ目、時間。1回にどれくらいかかるか。
2つ目、頻度。月に何回やるか。
3つ目、ミスの痛さ。
間違えたときにどれくらい困るか。
大・中・小でいい。
時間と頻度を掛けると、月に何時間その業務に使っているかが出ます。
最初に手をつけるのは、その数字が大きくて、ミスの痛さが「小」のものです。
ここを外すと失敗します。
時間がかかっていても、ミスの痛さが「大」の業務、たとえば点呼記録や請求金額を最初に選んではいけません。
1回間違えると、二度と使わなくなるからです。
社長本人が使わなくなるだけなら、まだいい。
社員が見ていた場合、社内で「あれは使えない」という話になります。
一度そうなると、次に持ち出すのが難しくなります。
なぜ「文章を作る仕事」から始まるのか
この表を作ると、たいていの会社で同じところに丸がつきます。
荷主への提案書。求人票。社内の連絡文。日報のまとめ。
どれも、間違えても直せる文章仕事です。
同じ調査で、AIを導入した企業がどの分野に入れているかも出ています。
| 種類 | 割合 |
|---|---|
| 生成AI(文章・資料作成、アイデア出し) | 82.6% |
| 音声認識・音声対話AI(議事録作成、自動応答) | 29.8% |
| 画像認識AI(外観検査、不良品検出) | 11.2% |
| 需要予測AI(販売・在庫最適化) | 8.1% |
| 異常検知AI(設備保全、予防保守) | 4.3% |
調査概要: 全国の中小企業10,000社に配布、有効回答1,647社。この設問はAI導入済み企業のみ(回答322社)。
出典: 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)(https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf)
生成AIが82.6%で、2位の音声認識29.8%を大きく離しています。
外観検査や需要予測は、1割にも届いていません。
実際に入っているのは、派手なものではなく文章仕事です。
導入の目的も同じ方向を向いています。
「業務効率化・作業時間の短縮」が87.0%で、2位の「品質向上」32.3%を50ポイント以上引き離しています。
効果のほうも、業務効率化が83.2%で突出しています。
つまり、時間を減らすために使い、実際に減っている。
それ以上のことを最初から狙わなくていい、ということでもあります。
在庫の予測や設備の異常検知は、データが揃っている会社の話です。
日報が手書きの会社が、最初にやることではありません。
表を作るのが面倒なら、AIに作らせる
紙に書き出すのが億劫なら、そこもAIにやらせます。
自社の業務のうち、どれをAIに任せるか決めたいです。
・会社: 【従業員31名の運送会社、地方都市】
・事務所でやっている仕事: 【配車、点呼記録、日報の入力、請求書発行、運行管理の報告、求人票の作成、荷主への提案書、社内連絡、シフト調整】
・私の状況: 【社長。パソコンはメールとExcelが少し。AIは触ったことがほぼない】
上の業務を「時間×頻度」と「ミスの痛さ(大中小)」で表にしてください。
時間と頻度が分からないものは、同業の一般的な目安で仮に置き、仮であることを明記してください。
そのうえで、次を出してください。
1. 最初に任せるべき業務を1つ。ミスの痛さが小さく、時間の合計が大きいものから選ぶ
2. その業務を、AIにどう頼めばいいかの具体的な文章
3. 絶対に最初に任せてはいけない業務と、その理由
「仮であることを明記してください」を必ず入れてください。
これを書かないと、AIは知らない数字を断定で書いてきます。
仮の数字が出たら、それを見ながら実際の数字に直せばいい。
白紙に書くより、間違った表を直すほうが人間は速い。
この表は、社員に見せてもいい。
どれが一番時間を食っているかは、社長より事務の人のほうが正確に知っています。
まとめ
事例が見つからないのは、あなたの調べ方が悪いからではありません。
83.3%の会社が同じところで止まっています。
他社を見るのをやめて、自社の業務を「時間×頻度」と「ミスの痛さ」で並べる。
時間が大きくて、ミスの痛さが小さいものが1つ見つかれば、それが最初の仕事です。
たぶん、それは文章を作る仕事です。
紙は1枚でいい。
列は3つでいい。
本を4冊目に進む前に、それを書いてみてください。
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